商業と公共の機能が求められる都市型商業施設
人流データで周辺エリア貢献度合いを可視化する

西日本鉄道株式会社様
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2025年4月に開業したONE FUKUOKA BLDG.(通称:ワンビル)では、最先端のICTを導入した施設運営を掲げ、開業と同時に人数カウントシステム「PASSER -CLOUD(パッサークラウド)」をご採用いただきました。
得られたデータに基づくインサイトによる施設運営の最適化や、施設が持つ公共機能の効果測定までを実現しています。

西日本鉄道(株)でワンビルの開業準備から運営統括管理をご担当されている平知佳様、新開千聖様、草場友貴様に、人数カウントシステム導入の背景から具体的な事例、開業から3か月*経っての反応など、お話を伺いました。 (*取材時期:2025年7月末)


西日本鉄道株式会社 ONE FUKUOKA BLDG.:公式サイト

天神ビッグバンを象徴する 新ランドマーク誕生

  • まず、ONE FUKUOKA BLDG.について教えてください。

    平様 ONE FUKUOKA BLDG.(通称:ワンビル)は、福岡市による再開発プロジェクト「天神ビッグバン」の中核施設として2025年4月にグランドオープンしました。

    西鉄の旧本社ビルである福岡ビルと商業施設の天神コア・天神第一名店ビル(天神ビブレ)の跡地を統合開発した、地上19階・地下4階の大型複合ビルです。



    (右)商業ゾーンをはじめ、オフィス、ホテル、カンファレンスなどの多用途が一体となったONE FUKUOKA BLDG.      
  • 開業にあたり、技研トラステムのセンサをご採用いただき、クラウドでデータ収集・集計いただいています。

    商業フロアには、100台以上のセンサを設置し、館内をくまなく測定している。
    平様 天神ビッグバンの対象となっている建替えビルでは、広場などの公開空地の設置や通路整備といった公共機能の促進が求められています。ワンビルに関しても、広場を起点とした地上と地下の歩行者ネットワークの強化として、東西貫通通路の整備などを行うことで回遊性の向上を図り、周辺施設への波及効果や天神エリア全体の活性化を目指しました。
    通行量をデータで把握することでエリアや館内での人の流れを具体的につかめるので、とても重要なデータであるととらえています。

    新開様 そのため、館内の一階の出入口、地下の出入口、地下と地上を行き来するための階段付近など、さまざまな出入口に人数カウントセンサを設置しました。オフィスフロアとホテルフロアは除外して、純粋に商業目的で来館いただいている方を正確にカウントする一方、一部公共通路としても活用しているスペースの人流カウントも行っています。

  • 当社の客数センサを導入していただくにあたって、特に重要視された選定ポイントを教えていただけますか。

    平様 弊社の既存商業施設では、すでに天神のソラリアプラザとソラリアステージ、レイリア久留米、レイリア大橋、チャチャタウン小倉といった商業施設で技研トラステムさんのソリューションを導入しており、その正確性や安定性、データの可視化が優れている点、かつ万全のサポート体制に絶大な信頼を置いていました。
    管理施設において、同じ指標での比較を可能にしたかったことから、ワンビルにおいても採用を決定しました。

    また前述したように、ワンビルでは商業施設としてのパフォーマンスの計測のみならず、公共性についても定量的な検証をする必要があったので、高精度なデータを得られることが必須要件でした。
    その点で、商業に加えて市街地や公共施設・バスなど幅広く実績がある技研トラステムさんのソリューションは最適だと考えました。

    新開様 ワンビルでは全館クラウドベースでの運用を行うため、先進的なIoTソリューションの積極的な導入を進めています。
    その点においてもパッサークラウドはデータの一元管理が可能であり、ファシリティマネジメント上の重要な要件を満たしていました。

    設置台数や設置場所に関しても技研トラステムさんと何度も話し合いながら念入りに設計し、予算と台数とのバランスや様々な要望に応えていただきました。

開業1か月で170万人来館 正確なデータが支える戦略的マーケティング

  • 開業後は大盛況ですね。

    南西側広場にあるアート作品「Pixel Tree」もメディアやSNSで大きな注目を集める。
    草場様 ありがたいことに開業1か月で累計170万人、2か月で300万人という来館実績を記録し、1日平均では4~5万人の商業来館者を集客しています。

    平様 注目度の高いランドマーク施設ということで来館数値の対外発信はひとつのポイントでしたが、パッサークラウドのデータからスムーズに早くリリースを出すことができ、その反響も非常に大きかったです。
    数字のインパクトもあってメディアに大きく取り上げていただき、その影響で想定を上回る集客につながりました。

    開業を機に、施設内・外の人流データ分析*も行っているのですが、特にテレビなどの従来メディアへの接触が多い顧客層からの強い反応があり、マーケティング戦略上の新たな発見がありました。

    *屋外では位置情報データ、施設内では当社人数カウントセンサ標準搭載のビーコンなどを用い、来街者・来訪者の属性・行動分析などを提供するサービス



  • 日常の運営ではどのように活用されていますか?

    フロアマップ上に人流データを可視化することで、状況の把握が一目瞭然。

    館内に設置したセンサに標準搭載のパッサービーコンを活用した人流データ分析もおこなっておられる
    新開様 オープニング期間では、館内の混雑緩和のため、各フロアでの案内業務を担当者総出で実施していました。リアルタイムデータを活用し、混雑しやすいポイントの特定や時間帯別の人流パターンを分析することで、スタッフ配置の最適化を図ることに大いに役立ちました。
    データに基づいた業務遂行により、効率的な運営と働き方改革の両立を実現できたと実感しています。

    草場様 
    開業からしばらくは日次で館内での来館案内のシフト調整を行う中、想定していた動線パターンとは異なる人流が多数発見され、パッサークラウドのデータを分析しながらオペレーション改善を図ることができました。

  • 目的の一つであった公共機能の効果測定に関してはいかがでしょうか。

    広く開放された地下鉄空港線からの動線。ワンビルには多くの動線が設計されている。
    平様 天神エリアは地下街が発達した都市構造を持ち、多くの商業施設は地上からと地下からの人流が存在します。この二層の歩行者ネットワークからの流入をそれぞれ把握するためには、GPSのように測定条件が制限されず、環境を問わない汎用性の高いセンシング技術が不可欠です。
    地下・地上それぞれの入口別来館者数分析は、関係者への報告において重要なパブリックデータとして活用しています。
    外部機関による天神ビッグバンの影響調査や経済波及効果の分析にも、当施設の人流データが基準として活用されています。都市機能への貢献度を客観的に示すデータとして重要な役割を果たしています。

    新開様 近隣の施設からも「天神エリアの人通りが増えている」というポジティブなお声をいただいていますし、肌感だけではなく実際に数値として裏付けられたデータを持っている点も天神エリアの強みです。お客様の奪い合いではなく、エリア全体の相乗効果により各施設の集客向上が実現されており、当初のワンビルのビジョンであった「天神エリアの魅力向上」につながっていると手ごたえを感じています。

リアルタイム分析による運営最適化 エリア全体の価値向上を目指して

  • 今後のデータ活用についてお聞かせください。

    西日本鉄道株式会社 天神開発本部
    ONE FUKUOKA BLDG.部 統括・施設管理担当
     (左から)草場 友貴様、 係長 平 知佳様、 新開 千聖様
     新開様 開業から3か月経ちましたが、混雑対応から日常運営の効率化といった部分では十分に活用できているため、今後は販促活動およびリーシング活動での戦略的な活用を計画しています。
    ワンビルの来館者データに基づいて提案できる営業資料なども検討予定です。

    平様 天神ビッグバンという大規模な再開発プロジェクトの位置付けから、ワンビルには単体施設を超えた広域的な役割が地域や行政から期待されています。そのため、新たな価値創出の基盤として活用する、ソリューションプラットフォームであるパッサークラウドのデータ品質と信頼性は、重要な役割を担っています。
    今後も定性的・定量的にデータを活用していきたいので、引き続きよろしくお願いいたします。
 お忙しい中、当社サービスのご活用についてお聞かせいただき、誠にありがとうございました。

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