1日20~30万人が行き交う天神地下街
地下街の複雑なトラフィックをデータで捉える
地下街の複雑なトラフィックをデータで捉える
福岡地下街開発株式会社様

福岡市の中心部・天神エリアに位置する天神地下街では、2015年から人数カウントシステムを導入。
商業施設としての役割に加え、天神ビッグバンに伴う再開発の影響測定や交通インフラ変化の検証など、地下街ならではの幅広い用途でデータを活用されています。
福岡地下街開発株式会社の田中裕貴様、森髙凌平様に、導入や現在の運用のお話を伺いました。
商業施設としての役割に加え、天神ビッグバンに伴う再開発の影響測定や交通インフラ変化の検証など、地下街ならではの幅広い用途でデータを活用されています。
福岡地下街開発株式会社の田中裕貴様、森髙凌平様に、導入や現在の運用のお話を伺いました。
全長約600メートルの地下街に 52台のセンサを設置
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天神地下街の概要を教えてください。
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19世紀ヨーロッパの街並みをイメージしてつくられた天神地下街。ひとつひとつ手作業により埋め込まれた石だたみの道にこだわりを感じる。 森高様 1976年に開業し、2026年に50周年を迎える商業施設です。天神駅から博多駅方面へ延びる全長約600メートルの地下空間に多様なテナントが入居しており、1日約20~30万人の方々にご利用いただいています。
主要な鉄道3駅に直結しているため利用者にとってアクセスが良いことに加え、地下街という特性上、天候に左右されにくく、雨天時や夏の猛暑日には地上を避けて地下を通行される方が増加します。
また、長期休みや年末年始、さらには近隣の大型ドームでイベントがある時も通行量が上がります。
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人数カウントシステムの導入に至った背景や課題をお聞かせください。
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統一感あふれる天井デザインを損ねないように設置された人数カウントセンサ。 田中様 従来は行政による通行量調査が数年に一度あり、それに相乗りさせていただく形でデータを取得していました。
しかし、数年に一度しかデータが得られないですし、来街者数や回遊状況を正確に把握する手段がない。当然販促活動やキャンペーンの効果を定量的に検証することが困難でした。
森高様 テナント様のお悩みに対しても、例えば外部要因とトラフィックの関係、売上変動の要因などデータを背景とした説得力のある問題解決策を説明できていませんでした。
リーシングの際も、出店いただくエリアの人流など直近の正確なデータをお伝えできない中での誘致は本当に難しかったです。
特に本社が関東・関西エリアの企業様にとっては天神地下街の人流はイメージしにくいでしょうから、客観的なデータは必須だと痛感することも多かったです。
こうした課題を解決するために、精度の高い通行量データを安定的に取得でき、日々の営業活動に活かせるシステムが必要だと判断し、2015年に導入を決定しました。
選定ポイントは 「精度」「安定性」「メンテナンスへの信頼感」
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技研トラステムを選んでいただいた理由を教えてください。
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森高様 選定のポイントは大きく3つありました。
第一に、精度の高い通行量データを安定的に取得できること。第二に、運用やメンテナンスが容易であること。導入後にメンテナンスの負担があると運用も困難になりますから、この点は特に重要でした。第三に、データの可視化や分析が視覚的に分かりやすく、現場で実際に活用しやすいこと。
これらの観点で最も適していると判断したのが技研さんのシステムでした。
田中様 導入から10年経ちますが、非常に安定して稼働しています。障害監視サービスも導入しており、万が一トラブルが発生した際にはメールで通知が来ますし、担当営業の方も迅速に動いてくれるので大きな障害になったことはありません。
再開発や地下鉄線延伸など、 外部環境変化による影響も可視化
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現在、どのような場面でデータを活用されていますか?
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地下街マップでの表示により認識性を高めたダッシュボード。 森高様 活用の幅は非常に広いです。
まず日々の業務では、営業担当者が毎日ダッシュボードを確認しています。特に連休明けなどは、天候や近隣でのイベントの影響など多様な背景も考慮し、人流と売上を合わせて分析しています。
昨年、当社の売上管理システムを更新するタイミングで技研トラステムさんの人流システムと売上データを連携させていただきました。
これにより、通行量と売上の相関関係を可視化し、営業部門で分析できるようになりました。
こういったデータはテナント様から希望があれば共有し、情報交換の一環にもしています。
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日常的な活用以外にも活かされていることはありますか
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インフォメーション広場。黒御影石でできたカウンターとステンドグラスも見どころの一つ。 森高様 天神地下街には休館日があり、メンテナンスのために年2日休業します。
この休館日の設定にも通行量データを活用し、売上や人流が少ない時期を選んで決めることで、影響を最小限に抑えています。
2024年から北エリアを順次リニューアル中なのですが、その際もデータに基づいてお客様の通行量や導線を分析し、店舗誘致の提案材料として活用しました。今後も段階的にリニューアルを実施していきますが、この方針を決定する際の判断材料としても通行量データを活用しています。数字という客観的な根拠があるからこそ、説得力のあるリニューアル計画が立てられます。
田中様 天神地下街は館内のデザイン性への評価も高く、全国から視察なども非常に多いです。
その際、よく通行量データについてもヒアリングされるため、やはり皆さんデータの重要性は認識されているようです。
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天神地下街ならではの活用方法は?
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鉄道3路線に加え、地上の大型商業施設やビルとも直結している天神地下街。街区ごとにセンサを設置し、細かく人流の計測を行っている 森高様 天神地下街ならではというと、外部環境の変化における検証があります。
福岡では現在「天神ビッグバン」という大規模な再開発プロジェクトが進行中で、次々と新しいビルがオープンしています。
例えば、天神ビッグバンの象徴的存在である「ワン・フクオカ・ビルディング(ワンビル)」がオープンした際、その前後で通行者数を計測したところ、約2割、具体的には1日あたり4~5万人ほど増加したことが分かりました。
新しいビルのオープンが天神地下街にプラスの影響を与えていることが、データで証明できたわけです。
また、地下鉄七隈線の終点は天神地下街直結の天神南駅でしたが、2023年に博多駅まで延伸しました。
「乗り換えしなくてもよくなるので天神地下街を通る必要がなくなるのではないか」という懸念もありましたが、実際には、インバウンドの方々も含め、博多・天神エリア全体で回遊できるようになり、通行量が増加してむしろ賑わうようになったんです。
このように、ビルのオープンや交通インフラの変化といった外部環境が変わったタイミングで、天神地下街にどのような影響があるのかを検証できることは、地下街ならではの活用方法だと思います。
今後は属性データ分析も視野に さらに詳細な顧客理解を
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今後の展望についてお聞かせください。
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福岡地下街開発株式会社
管理部 副長 田中裕貴様(左)総務企画部 主任 森髙凌平様(右)森髙様 今後は、人数カウントだけでなく、年代や性別といった属性データまで分析することも検討しています。来街者の特性に合わせた施策や、テナント構成の最適化など、天神地下街の魅力向上につなげていきたいですね。
田中様 データ活用を深化させることで、地下街としてより効果的な施策を展開できると考えています。
今後も再開発を含めエリア全体の変化も続くでしょうが、その都度通行量データで影響を測定し、周辺商業施設などとも連携しながら、天神地下街全体の価値を高めていきたいと思います。
技研トラステムさんのシステムは、天神地下街の日々の運営に欠かせないパートナーとなっています。
お忙しい中、当社サービスのご活用についてお聞かせいただき、誠にありがとうございました。