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イベント・公共施設向け

「帰宅困難者」への備えは人数の見える化から始まる

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公共施設・イベントで滞留者人数を把握する理由とは?

“人の滞留”を前提にしたBCPへ

公共施設やイベントにおけるBCP(事業継続計画)の視点から、滞留者数の可視化の意義、実例からの学び、人数測定の勘所を、
人流センサー/入退場カウントシステムなどのテクノロジー活用も交え、わかりやすく解説します。
大規模地震や台風、交通の遮断。こうした発災事における国の指針案では、発災直後の新たな混乱発生を防止するため、むやみに移動を開始させず、状況が安定するまで施設内で待機、時間的あるいは空間的(移動範囲や移動手段等)な分散帰宅措置を基本とするガイドラインも示されています。

だからこそ、広く一般の来場者などが集まる施設やイベント主催者側には、「どこに」「何人」滞留しているかを正確かつタイムリーに把握し、必要物資や人員、安全管理を適正に準備・運用するBCP(事業継続計画)策定が不可欠です。

■帰宅困難者対策に、なぜ“人数の見える化”なのか

滞留人数とその時系列推移(トレンド)を把握しているか否かで、BCPの実効性は変わります。
  • 支援物資の最適化
飲料水・食品・毛布・簡易トイレ・衛生用品など、必要量を人数に応じて試算し、配備できます。平時から施設・イベントにて実測している在館者人数が、有事対策での計画・実行の基礎データになります。
  • 安全確保
例えば大規模の広域イベントなら、交通事業者・自治体・警察・消防との連携、支援要請に、滞留人数と推移データが運用基準、タイムラインのトリガーとして活かされます。
  •  検証と計画改善
「いつ・どこで・何人」が可視化されていれば、備蓄の過不足や手順が適正だったのかなどの改善点が明確になり、BCP改訂につながります。

■実例から学ぶ

大阪・関西万博(2025)約3万人が帰宅困難に

(画像はイメージです)
会場への主要交通手段である地下鉄がトラブルで運行停止となり、万博会場内での待機が長時間化しました。
このような際でのリアルタイムの滞留者数の把握が、開放すべき施設数の選定や、支援物資配置、臨時バス運行など緊急時の判断の助けになります。

大阪万博:万博来場者3万人が帰宅困難、ベンチなどで一夜…休憩場所や交通手段の情報「SNS頼り」も : 読売新聞 (外部リンク)

関西国際空港(2018・台風21号)5,000〜7,800人が空港島に孤立

(画像はイメージです)
高潮浸水と連絡橋破損が重なり、空港が“陸の孤島”化。当初は孤立人数の把握に時間を要し、高速船ピストン輸送、バス代替など救出調整に影響が出ました。
以後、多くの空港にて、滞留者数の傾向把握のため、(測定手法はさまざまですが)継続的な入退場者数測定を実施されており、空港BCPにおける安全対策・滞留者対策が改善強化されています。

関西空港が大規模冠水、台風21号の高潮で浸水被害も 再開見通し立たず:朝日新聞 (外部リンク)

■人数を、どう“見える化”するか ~技術と設計の基本

人数カウントの基本

入退場×エリアで捉える
 
では滞在者数を把握するためには、どのような場所で測定するのが望ましいでしょうか?
イベント会場や施設の全体とゾーニングで考えるとわかりやすくなります。

  • 入退場カウント
ゲート・出入口で流入/流出をリアルタイム計測し在館者数を算出。
空港やアリーナ、スタジアムなど大規模施設では全出入口の網羅が有効です。
  • エリア内カウント
滞留が生まれやすい場所にセンサーを配置。局所的な密度と滞留時間の把握で、ボトルネック箇所の早期認識と誘導に直結できます。
ホール・コンコース・待機所・トイレ前などで。

人数カウントセンサの効果的な設置場所

人数カウントを行う場合、センサ/カメラを適切な場所に設置することが重要です。
その場所で想定される人数や動線、屋内か屋外か、設置環境などにより人数計測精度は変わります。
安定・正確に測定するために適した設置場所や方法、最適な機器の選定など、まずは安心できるベンダーに要望内容を相談されることをお勧めします。
  • 外周ライン

    会場ゲート、施設出入口、駅コンコース連絡口など、場内全体の入退を押さえる“一次指標”。

  • 動線の結節点

    エスカレーター前/エレベーターホール/通路など、滞留が生まれやすい中継点。混雑早期警告に。

  • サービス施設の出入口

    トイレ・休憩所・喫煙所の利用状況の把握は、安全面だけではなく、衛生維持・清掃計画の運営効率改善に活用化。

  • 一時待機所・避難所

    段階開放を前提に、各待機所・避難所の定員・混雑率を見える化し、スムーズな誘導と支援物資、スタッフを最適配置。

■施設別の人数測定ポイントと利活用イメージ

滞留者数の測定データは、その場所、施設の性格により意味づけが変わります。データ利活用の目的をあらかじめ明確化しておくことが、適切な運用につながります。

1.駅・空港・港湾

● 目的:列車・便の乱れやアクセス断絶時の滞留者安全確保と広域輸送の判断
● 重点配置:改札・連絡通路・チェックイン周り・到着ロビー・タクシー乗り場動線

2.行政施設(区役所・都道府県庁など)

● 目的:地域の初動拠点として、住民の一時受け入れと各課の業務継続を両立
● 重点配置:出入口(正面・裏口)、エレベーターホール、待合スペース

3.アリーナ・大規模イベント会場

● 目的:入退場時のオペレーション計画(ゾーニング、アナウンス)に人数トレンドを反映
● 重点配置:ゲート、コンコース、アリーナ入口、フードコート、トイレ前

4.商業施設(モール・百貨店)

● 目的:顧客・テナント・従業員を館内待機させる前提で、支援物資総量と配分を管理
● 重点配置:各出入口、主要動線、エスカレーター結節、バックヤードの通路
 

■人数情報を元にしたBCP指標例 

平時からの準備として、各動線における人数カウントを取得しておくことで、発災時での対応内容、準備などの計画化に役立てていただけます。
特に施設の場合、これらの指標は、発災時のタイムラインやBCP策定のみならず、日常における施設の事業指標として活用でき、運用面のDX化に貢献できます。

滞留者数(総数/エリア別)
混雑率
流入・流出人数の把握
ピーク予測
滞留時間分布 段階開放場所の管理
(収容率/次候補)
配布物資の試算
(人数×配分係数)
支援人員の配置想定 避難誘導/広域連携 トイレ・休憩所の利用率
清掃・補充の残量警報

■まとめ

  

「数」を根拠に、すべての判断を早く・確かに


帰宅困難者対策は「とどまる」が基本と言われています。
その前提で、滞留者の“現在数”と平時での“推移人数”をつかんでおくことが、安全対策・連携対応・資源配分のすべてを支えまると言えるでしょう。

人流カウントシステム導入により、出入数の把握/動線の混雑状況/施設運営の可視化が実現できます。

状況が「早く・正確に・共有」できるための人数カウントシステムを、平時にこそ、あらかじめ整えておくことをお勧めします。
 *参考文献
 内閣府:「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策のガイドライン」(令和6年7月改定)
 国土交通省:「A2-BCP」ガイドライン(改訂版)(令和6年6月)




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