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人流データ解析での推計値と実測値による活用の違いとは

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自治体の各種政策に反映させる基礎データの一つとして、「人流データ解析」の価値が高まっています。
この「人流データ」には【拡大推計データ】と【実測データ】の大きく2種類あることをご存じでしょうか?
この記事では、これらの「人流データ」の特性に応じた活用について簡単に解説します。

■人流解析とは?

人流データとは?
人流解析とは、人の移動や滞在の状況を定量的に把握・分析する手法です。
特定地域や施設内で「いつ」「どこに」「何人いるか」といったデータを収集し、人数の時系列推移、移動経路、滞在時間などを解析、人々の移動や行動パターンを詳細に分析する技術です。

調査員が手作業で人数を数える方法もありますが、近年はICTの発展により自動で大量のデータを取得・分析できるようになりました。

この人流データは、商業施設の来店客数の計測やイベント来場者数の把握、市街地の通行量計測、公共交通の利用状況の可視化など幅広く活用されています。

自治体でも観光や都市計画、防災計画などの分野で人流データを政策立案に役立てる動きが進んでおり、科学的根拠に基づく政策立案(EBPM)の推進に資する重要なエビデンスデータにされています。

■目的と対象範囲を明確にする

まず、人流データを「何のために」「どの範囲で」取得・活用するのか目的を定めておきましょう。

広域的な人流傾向の把握が目的なら、携帯電話の位置情報データのようなビッグデータが有効ですが、市街地の特定場所の通行量、施設内やイベント会場の来場者数や混雑度合い、バスの乗降者数などでの計測が目的であればカメラやセンサによる実測の専用システムが適しています。

広域的な移動軌跡を把握したいのか、局所的で高精度な人数を知りたいのかによって、適切なデータソースは異なります。
目的・対象範囲を明確にした上で、それに見合う人流データ取得の手法を選定することが重要です。

■拡大推計データと実測データの違い

人流計測から得られるデータには、【拡大推計】による人流データ(主に携帯電話など位置情報データを元に統計的に推計された人流データ)と【実測】による人流データ(カメラ・センサ等で直接計測された通行量データ)があり、それらの違いと活用上のポイントを解説します。

これらの特徴と相違点を正しく理解することが、あらかじめ定められた目的と範囲における人流データ利活用成功のカギとなります。
  拡大推計データ
(位置情報ビッグデータ等)
実測データ
(カメラ・センサ計測値)
① データソース
スマホGPSや携帯基地局情報などから抽出された一部利用者の位置情報を基に統計推計(拡大推計)したデータ。 センサやカメラ映像解析などによりその場を通過・滞在する人を直接カウントして得られるデータ。調査地点で観測された実数に近い人数データ
② カバー範囲
広域的:都市全域や地域間の人の移動を把握可能。複数地点間の動態や移動軌跡(OD)分析に適する。 局所的:設置したカメラ視野内やセンサ周辺など限定された範囲のデータ。スポットごとの詳細計測に適する。
③ データ精度
実際の人数を直接測ったものではなく、あくまで推定値。統計的偏差や誤差を含み、実態と乖離する場合もある点には注意必要。 人を実際に計測して得た値であり、真値に近い高い精度を持つデータ(ただし、機器により精度差が出ることがある)。EBPMなど実績値が求められる用途に使いやすい。
④ 内在する偏り
サンプル偏り:
データ源の利用者層に偏るため全体代表性に限界(例:位置取得を許諾したスマホユーザーのみ)。また、屋内・地下は検出困難ゆえ、推計結果に偏りが生じうる。
カバレッジ偏り:
測定地点以外の人は計測されないため、網羅範囲以外の人流は捉えられない。とはいえデータそのものは測定対象についてほぼ正確なため、統計偏りは基本的にない。
⑤ 主な用途
人の移動での大局的な傾向分析や比較・指数化に向く。広域での動向、観光やイベントでの来訪者数傾向分析など。※絶対数の代替には不向きであり、「増減」や「比較」に留めて活用するのが適切 施設ごとの利用実績把握やKPI指標の計測、特定のエリアでの通行量調査など、実数把握が求められる用途に適する。例:通行量データからの賑わい評価、施策前後での実利用者数比較、避難所のリアルタイム人数監視など。
⑥ 推奨する活用
実測データと突合・補完し、精度向上を目指すことが望ましい。
推計モデルの補正や検証に実測値を用いることで、データの信頼性を高めつつ広域分析に活かす。
拡大推計データと組み合わせて活用することで効果倍増。
局所データを広域トレンドの中で位置付けたり、局所計測できないエリアは推計値で補ったりと、相互補完的に利用可能。
上記のように、【拡大推計データ】と【実測データ】には一長一短があります。

広域の推計値は文字通り街全体の「ざっくりとした人出」をカバーでき、局所の実測値はその地点における「正確な人数」を把握できます。
広域データで大まかな動向を捉えつつ、スポットデータで実態を補強することで、人流解析の信頼性と活用価値が飛躍的に向上します。
それゆえ、両者を組み合わせることが最善策とされています。

人の動きのパターンや流動性に主眼を置くなら、多少誤差はあっても広域をカバーできる携帯電話データに利があります。
一方で、施策のKPI評価や精緻なEBPMに使うのであれば、できるだけ真値に近い実測データが求められます。

【推計値】で目的を果たせるか、【実績値】として使える精度が必要かを判断基準にすると良いでしょう。

必要な精度が得られる人流データ測定の手法

通行量
EBPMの基礎データとして来街者数そのものを正確に押さえたい場合は、カメラ画像のセンシングでカウントする実測手法を選ぶべきです。

店舗や公共施設の入口に設置することにより、入退場人数の自動計測や混雑の可視化を行ったり、街灯やアーケードに設置することで、通行量を計測できます。
またバス車内に設置することにより、乗降者数データを収集し、運行計画の改善に活用されている事例も多くあります。

ただし、この場合、実測値の「計測精度」で分析結果が大きく変わります。
AIカメラの画像処理センシング機能の精度と、人数カウント(人流計測)専用カメラシステムの精度、それぞれを考慮し選定されることをお勧めします。

技研トラステムの人流データ測定

測定方式別 ユースケースでの特性の違い
測定方式別 ユースケースでの特性の違い
技研トラステムでは、商業施設や商店街、市街地、公共施設、駅・空港、バスなどの人流把握目的で、「人流センサ/AIカメラ」や、その機器に標準搭載した「ビーコン機能」を使用した人流データ取得に特化したシステムを提供しています。
下の表にある通り、広い目的に対応でき、かつ、高精度での実測データの提供が出来ることが特長です。

■まとめ

人流データ活用のベストプラクティスとは

人流データ活用のベストプラクティスとは
人流解析は、エビデンスに基づく政策立案(EBPM)の基盤として、自治体の様々な意思決定を客観的に支える強力なツールです。

最も重要なことは「目的に応じて適切な手法を選び、必要に応じて組み合わせる」という柔軟なアプローチです。
例えば、日常の都市計画やまちづくり施策では広域推計データで人口動態を把握しつつ、具体的なエリアや施設での検証には実際の現場での実測データを用いる、といった使い分けが考えられます。
防災やBCP策定の文脈でも、人流データによる避難行動の分析や平時の通行量把握が被災時の迅速な対応計画に繋がります。

データに基づいて人々の動きを捉えることは、肌感覚に頼っていた施策に説得力を与え、関係者間のコミュニケーションを活性化する効果も期待できます。
客観データを共有することで、課題認識が統一され合意形成が円滑になるといった副次的なメリットも報告されています。

「人の流れ」をエビデンスとして課題解決や魅力創出に役立てる

データに裏付けられた施策は、街のにぎわい創出や地域経済の活性化という地方創生の目標達成にも貢献します。
例えば、イベントや観光施策の実施の前後で人出データを比較分析すれば、その施策の効果を定量的に示せますし、商店街の通行量データを公開して自治体・商工関係者で共有すれば客観的なまちの魅力度指標として活用できます。

このように、人流データを政策の羅針盤として活用すれば、限られた資源を有効投入し、より賑わいのある持続可能な地域づくりに向けた舵取りができるでしょう。

【ご案内】技研トラステムの人流データ(人数カウント)システムとは

人流カウントシステム、ピープルカウンターは、人材不足の背景から省力化・DX化の取組として、商業施設や公共施設を中心にご利用いただいています。

技研トラステムでは、独自の高精度センサーシステムによる人流カウントシステムを商業施設から公共施設、交通機関まで幅広く国内外に延べ10万か所以上に設置しています。ご興味お持ちいただけましたら、ぜひお気軽にご相談ください。